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遠野という旅

盛岡から山あいを走らせ、早池峰神社を目指した。

つづら折の路を、縫うように、民話の里、遠野へむかう。ナビは付いてはいるが、方向を確認できる標識や案内板が少なく不安になる・・・・・・景観条例の為か、看板が少ないと聞いていた。

早池峰神社、下社の入口に到着すると、全体の案内地図が掲示されている。並んで「熊の出没に注意」の看板。これだけ山々を縫って入山すると、そこは寧ろ人間の領域ではなく、山の神の領地に分け入ることに違いない。

熊は、山の神の使なのだろう。早速、不浄なる人間を無許可で受け入れることを拒んでいるのだ。

             熊注意
     
車で、更に進み、社殿の前の一の鳥居に近づくと、訪れる人も少なく 外国人1名 相模原からカップルが1組だった。次の予定もあり、手早く参拝を済ませて遠野市街の方面へ向かった。

次の地、伝承園に向かう、此処には遠野の古来よりの暮らし、民俗がコンパクトに集められ分かりやすい。それにカッパ伝説の常堅寺、カッパ淵にも近いはず。
詩情豊かな「昔語り」を聴いた後、南部曲り家、オシラ堂、水車小屋、雪隠などを見学した。

伝承園にて、「カッパの捕獲許可証」なるものを手にして、(ビールの)ホップ栽培のおばちゃんに尋ねながら常堅寺裏のカッパ淵まで歩く。

             カッパ淵
                                   
常堅寺の裏を流れる川の淵にはカッパが多く住んでいて、人々を驚かし、悪戯をしたといわれている。澄んだ水が流れるカッパ淵は、鬱蒼と した木立に覆われ、今にもカッパが現れそうだ。

今回は、自らプランを練り、事前に旅情報や地域の歴史について可能な限り調査して臨んだだけに、ピンポイントでも受け取る情報量が違うと自負している。
たとえ其処に、目に見えるような施設が無くても、蓄えた想像力が補ってくれる「新しい旅」の楽しみ方ができた。

カッパが居るかいないか?・・・・それは想像の中でいい。木陰に流れる水辺に、如何にもカッパが棲息していたかも知れない様子があればそれは旅人にとって不足ではない。
「カッパ捕獲の許可証」なるものもゲームだ、通行手形、共感の印でしかない。

其のあと、遠野の殿さまの居城であった「鍋倉山城跡」へ登った。曲がった樹木の間からは眼下に遠野の城下が一望できる。

全国300藩の中、唯一の女性の殿さまが、存在した南部遠野藩の居城のあとだ。高台にある山城のため、遠野盆地の眼下には、雲海が広がり、東洋のマチュピチと例えられるような山城の光景も見えたにちがいない。

              鍋倉城

宿は、旅の目的からすると、全国画一的なサービスのホテルではなく民宿こそがふさわしい。
時の経つのもわすれ、女将と話題が尽きない。旅の醍醐味である。

翌朝どうしても立ち寄らなければならない場所があった。「デンデラノ」である。地元のひとによると、流木で作った標識があるだけで、何もない原野であるという。
ナビにも示されない、荒れ野を目指して辿り着くと、まさに山あいの丘の一角を占めた茫漠たる雑草地となっていた。車の離合すら拒否するような場所だ。凡そ見せようとする作為も感じさせず。唯々、寂寥感の漂う「姥捨て伝説」の場所だった。

                         
              デンデラノ


「デンデラノ」とはどういう意味だろう、京都には鳥辺野(とりべの)、化野(あだしの)、蓮台野(れんだいや)という風葬の地があり、沖縄では風葬の地を「テラ」と呼んで近代まで洗骨の風習があったらしい、何処か共通点もあるのだろうか?・・・どれも「死」というカテゴリーに近い気がする。然し、今生に在る者だれしもが受入なければならない厳粛な掟が示されている場所だった。何も無くて、訪れる客を拒むような荒地こそ、此の伝承に相応しいものに思える。
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犬神を祀った址

「カーン」
白球を打つ硬い金属音に続いて、大きな歓声、鉦太鼓の音が、すり鉢形の野球場の上空に舞い上がった。

球児の試合の応援にいくと、この市営野球場の周囲をめぐるクリーク沿いには、「高太郎犬神屋敷址」という奇妙な、白い高札がひっそりと立っており、次のような記述がある。

【この辺一帯は、小高い丘になっていて、屋敷があり、犬神さんを祀っていたから、付近のひとたちは、通称「犬神屋敷」と呼んでいた。

 犬神供養塔は、自然石に「犬神」と二字が陰刻されていて、代居春巳宅の裏藪の中に祀ってあったが、現在は南500m南の高太郎丸、小太郎丸屋敷址に移されている。

建立の年月日は不明である。建立の目的も定かでない・・云々】とある。

 今頃、「犬神」という文字が公の掲示板があるのは、ホンとに珍しいのだが、「犬神信仰は四国一帯や、九州の東部に伝わった信仰、呪術で、憑き物のこと」とある。

飢えた犬を首だけ出して土に埋めて、眼のまえに餌を置いて「飢えが頂点にたっしたところで犬の首を切って祀る」という猟奇的なものらしい。

これにより呪詛する者の願いを聞き入れ、財宝を運んだり、他人に憑いて災いを起こしたりする目的に使役するというのだ。

              狼1

但し、一度「犬神」を祀ってしまうと、今度は、子々孫々、家系累代の女性に憑いて廻るという。

まるでミトコンドリアのようだ。それとも女性は「坤」の卦を負うことにより天地の魔物が憑きやすいという理論が先行したことによるのものだろうか。何れにしても、そのために婚姻などでは「犬神憑きの家」として差別をされたといいます。

そうすると、この高太郎という地名が、「高太郎犬神屋敷址」として掲示され、犬神を祀ったと、そのままに記されているのは意外なことである。

 犬神信仰の歴史は古くて、平安時代には「犬神禁止令」が度々出されるほどだったという。

狐憑きや、蛇憑きなどと並んで、動物の霊を駆使して人を「呪詛」したりする信仰で古代中国より伝わったともいわれる。

動物の憑き物は、人や家にとり憑くと重い病気を引き起こしたり、厄災をおこしたりする悪霊らしい。

易に於いても、「山風蠱(さんふうこ)」は凶卦のひとつで、皿に盛った食物を「蟲(むし)」が食い荒らすという意味で、腐敗と混乱ののちに家系が衰亡するという象である。古代の呪詛には「蟲毒」をもちいたという記録もあることから、家格が中心の古代においては、大変に恐ろしいものだったようである。

                  山風蠱

犬は、もとより金獣であり、金気の生き物、殺気が強いために、うまく手なづけることで呪者の凶器に変えるものだろう。

金気の獣としては、犬猿鶏が干支でも想い浮かぶが、民話の桃太郎では、邪気を祓うことができるという「桃」の属性を帯びた桃太郎が、猿、犬、雉という金獣の家来を連れて、鬼ヶ島に退治に出掛け、滅ぼして財宝を持ち帰る話は、「金剋木」の五行相剋の敷衍のようである。鬼は「陰・穏」であり、丑寅(艮)の木気の怨霊の象徴であるからだ。

つまり殺気のつよい金獣を、上記のような方法で祀ることにより「犬神」を使役したものだと思える。

 そのために「犬神筋」「犬神もち」と呼ばれて、恐れられ差別を受けて来たものらしい。

それ故に、今日に於いてもなお「高太郎犬神屋敷址」が犬神を祀っていたという掲示板には驚かされる思いがした。

紫陽花のカタチ

紫陽花の季節が来た

梅雨空の下、みずみずしい若葉に
露の雫を浮かべた葉のうえには白、藍、紫の
大きなメロンパンのような、大輪をつけている・・・・・・

           紫陽花


紫陽花は、実は小さな花が集まっていることで大きな髪飾りのような花に見えるものらしい。
語源は、「藍色が集まったもの」を意味する、「あづさい(集真藍)」が有力とされています。
花言葉の「移り気」は、紫陽花の色が開花後に色をうつし変化させることに依るらしい。

多くの人に、「外見上、花に見えている部分」は、実は装飾花で、おしべとめしべが退化していて、花びらに見えるものは萼(がく)のために実を結ぶことはない。
                
              紫陽花2

紫陽花のように、人は外部の世界をバラバラな寄せ集めとして認識するのではなく、意味のある、まとまった全体像として構成、認識することを心理学用語で「ゲシュタルト(形態)」という。

              ゲシュタルト崩壊

世界に、平和国家として認識されている日本の信頼、イメージは、不戦の誓い、平和憲法9条、戦後のあゆみ、国民の勤勉さ、治安のよさ、和を大切にする文化、モノ造りの品質の高さ、おもてなしや公共のマナーの良さ・・・等々による。
然し、この日本全体のイメージは、そのようなバラバラな要素の和ではなく、国民全体の姿勢と、相互の関係により獲得したゲシュタルトといえる。

              憲法9条

唯、梅雨が明け、陽射しが炎天に変わる頃、花の色は斑(まだら)になり、カタチが崩れると、咢の集まりもバラバラにみえて紫陽花のぼんぼりも壊れてしまう。
これを「ゲシュタルト崩壊」というらしい・・・・・・

―――「ゲシュタルト崩壊」とは、知覚における現象のひとつで、 全体性をもったまとまりのある構造(ゲシュタルト)から全体性が失われ、個々の部分にバラバラに切り離され認識される現象をいう。

安保条約の片務性、自衛権と軍事力、同盟相手国からの圧力、国際の要請としてのPKO・・・等々に
処するため、不戦憲法を、自然権としての固有の自衛権から、集団自衛権、共同軍事行動まで拡大し・・・
なし崩しに、解釈を曲げてゴマカシ続けると・・・

              学徒動員

焦土と犠牲のうえに築いた「平和国家日本」という信頼のゲシュタルトが崩壊する瀬戸際となる。
このまま、平和憲法のタガを解いて海外派兵に突き進むと、その損失は、甚大であり、信頼の回復は一朝にして成らずである。

                積乱雲

水無月を過ぎて、陽も強くなり、平和な空に、天高く積乱雲が涌くころになると
紫陽花の色は褪(さ)め、ぼんぼりのような嫋(たおやか)なカタチを喪う、ゲシュタルトの崩壊が始まるのだ。

夏空に涌き上がる積乱雲を、戦禍の雨に変えないために、平和の支え手である国民の自覚に頼るしかない。

龍の消えた街

警報音が鳴っている・・・・・・。夕暮の迫る山あいより、赤い点滅を繰り返しながら気味悪い音を響かせていた。

 「龍が来るぞ!」
 少年は叫んだ。

間もなく、山麓のぽっかりと空いた洞窟から、闇を照らす巨大な蛇のような怪物が千メートルくらい先まで光を射し、身体を大きくうねらせて龍穴を滑り出てきた。

グォーッ・・・地面を揺らしながら大きな音が襲(おそ)いかかる。

               SL.jpg

大地より湧き上がるように、黒い雲を一面に吐き散らし、小さな街をひと呑みにする勢いで向かってきた。
 巨体を大きく捻り、前方に眼を燿かせて翔んでくる。

 貌の両眼は真っ赤に光輝いて、鰓から炎を吹き出し、巨体の周囲には黒雲を引き連れていた。
―――食い入るように目を瞠った。

               D51Ⅱ

 龍は一日何度か翻った。

十数分、そこに止ると、水と黒い餌を頬張りまた、あの山の穴に昇っていく。

 龍は、古来より天地の間を飛び交って天命を占うとされた。五本爪の龍は皇帝のみに許され、天皇の御衣である袞冕(こんべん)も五本爪の龍が縫取られている。八卦の五爻は君主の位を、九星図の五黄土星は中央を示すものらしい。


壁のように塞がり、連なる山のうねりは龍脈と称され、地の底から湧き上がる運気の強さを表すといわれていた。この気の流れを知り、気の集まる処「龍穴」を知ることが力を得ることだった。

                  SL5.jpg

 古代の君主は、これを知り、風水術を施して、四神相応の適地を都として定めたという。
北に玄武、東に清龍、南に朱雀、西に白虎・・・方位を守る四神の依る処が妙地とされた。

 子供の頃、あの龍に乗って昇っていくことを考えていた。
龍穴を通って、永い間考えていた龍の棲むという大きな都会に出ていくと決めていた。

 毎日、あの穴を眺めていた。
                 龍

数十メートルはある黒い巨体の動きを、光る鱗のような模様を輝かせ、天地に音を轟かせて雲をまき散らしながら飛ぶ鉄の生き物を、ずうっと観察した。
・・・・・・
二十数年の月日が流れた―――。

大都市に出て・・・振り返ることもなく働き、漸く故郷を想うゆとりもできて・・・・・・
 今、あの街に帰ってみた。

 しかしそこにはもう、龍は棲んでいなかった。
               
 錆び付いた鉄路は今・・・ローカル線と呼ばれ、箱型の小さな乗り物が枕木の間の雑草の上を行き交うだけになった。幹線道路も大きく迂回し、新しい家並みや大型ショッピング施設は郊外に移って、旧市街に人の姿はまばらになっている。

                 SL橋

 「龍が消えてがら・・ずっとこうだス・・」
 腰の曲がった老人は、訛りを含んだ声で天を仰いだ。

 ・・・・・・

 今でも、龍を待ち望んでいる「撮り鉄」と呼ばれる多くの人々がいる。だがD-51と呼ばれるSLは、時おり観光の目玉として、カメラの放列の前に往時の姿を見せるだけの街になっていた。

はぐれ蛍

              古民家レストラン

 森の古民家レストランを出ると、もう辺りは夜の帳(とばり)が下りて、昼間は気づかなかった河鹿や虫の音が、一斉に迫ってきた。

薄暗い外灯から遠ざかると、闇の色は濃くなり、路の中ほどに、小さく光る粒が落ちていた。
不思議に思い、近づいてみると、その光るものは、微かに動いて明滅を繰りかえしている。

──蛍だ・・
              蛍1

この地域は、標高500mの高地にあるため、夏の気温も平地より5℃くらいは涼しい。
九州の暑い夏でもエアコンは要らず、窓からの夜の冷気は肌に寒いほどだ。

麓では、蛍の舞う季節は、もう過ぎようとしていたが、この奥山の清流の付近は今が
盛んのようである。

「こんな路の上だと轢(ひ)かれてしまうよ?」

米粒ほどの小さな蛍を掌にのせて、そっと道路脇にある紫陽花の葉の上に移してやる。

              蛍2

路の下からは、心地よく清流の響きが届いてくる。更に奥の暗闇の中空には、微かに揺れて飛ぶひと群れの夏虫の灯がみえた。

──蛍の木だ。

「おまえも、早く 仲間のところへ行きなさい・・」
 私は、まだ幼い「はぐれ蛍」に声をかけた。

              蛍3

 小さく点滅する光の粒は、未だ葉のうえに止まったままで、飛ぼうとはしない。

──困った奴だ・・

 すると、昨年の秋、10才で亡くなった、愛犬「マロン」の姿が 脳裡に浮かんでいた・・・
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