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バスに乗った少年

あと30分で無事に到着する予定だった。時計は、午後4時を過ぎていた。

幼稚園の児童を乗せたバスは、郊外のバイパスを通過しているとき、ガイドの立川鈴香に勤務先であるバス会社の担当者から連絡が入った。

20分ほど前に、休憩の為に立ち寄ったパーキングエリア内で、当バスに乗車していた園児を一人、取り残して出発していたという連絡だった。
「えっ、まさか・・」

ガイドは、驚いて、木村貴くんの乗っているはずの席に視線を泳がすと・・・
 確かに彼の座っていたはずの席は空である。
 「・・・・・・」
                バス

定員60人のバスに45人が乗っていて、空席もあった。隣県の動物園からの帰りで、疲れて眠っている子も、荷物のリュックや水筒を横においている子もいて、席はバラバラになっていた。

一人、乗車していた保育士の先生も、前方の席に座っていた。もうすぐ緊張から解放される安堵と疲れがあって、頭を垂れたままだった。

──確かに出発の際に、人数は確認したはずだった。・・基本中の基本である。

休憩で駐まったときに、何人かは降車しなかった子もいたが、ちゃんと出発前に確認したはずだった。
──数え間違いだったのだろうか?
同時に、引率の先生も、あの子たちを目で追っていたと思った。

                バス車内

連絡によると、木村貴くんは、トイレ休憩の際にバスを降りて・・・お腹の具合が不安になり個室トイレに入っていて、時間がかかったという。
バスの出発時刻までは10分間とは知っていたが、いつも点呼を執っていたので残しての出発はない、と思っていた。

用を済ませて、
バスが駐車しているはずの場所へ戻っても、似たようなバスが数台あったが自分が乗ってきた園名の掲示のあるバスは探しても見あたらなかった。
                   
急に不安そうな表情になっているところを、他社のガイドさんが少年の異様な表情に気づいて声をかけてくれたという。
──今、正面の土産物店の所で待っているので、引き返し乗せてきて欲しいとの連絡だった。

                 パーキングエリア

とんでもないミスをしたと思った。父兄に知れることになったら・・厳重な譴責になる。

連絡を受け一旦、停止して待機していた運転手さんに理由を説明し引き返すことになった。
子どもたちはめいめいに驚いた表情で、引率の先生も自らの責任も感じてウロウロとしていた。

──それにしてもすぐに気づいて対処できて、内心ほっとしたのもホンネだった。

再び、いくつか土産店の並んだパーキングエリア内に引き返すと、木村貴くんは、半分泣きそうな顔でバスの到着を売店の50歳くらいのおばちゃんと共に待っていた。

「ごめんね、木村くん」
ガイドと引率の先生は、駆け寄って貴くんを抱きしめた。
貴くんは、急に、顔を歪めて泣き出した。

そこで、一緒にいた、店のおばちゃんにも丁寧に挨拶し、お礼をいうと、彼女から意外な言葉を聞いた。
「ああ・・そうだったんですか。つい先日も、同じような事件があったんですよ。あそこを見てください」
といい、その指の先の差すほうをみると、大型バスが駐車するエリアの車止め近くに、白い花や子供の好きそうな、お菓子や飲み物の缶などが供えてあった。

                  献花

「三週間ほど前に、あそこで大型バスがバックする際に、轢かれて男の子が亡くなったんですよ。ちょうど今ぐらいの時間だったんです・・・」

──では、あのとき、バスに乗っていた子 は?・・・。

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