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鏡もちは白蛇?

正月が近づくと、年迎えの品を売る市が立ち、餅屋には正月用の【鏡餅】などが並ぶ。最近は核家族のせいか各家庭でモチ米を蒸かし臼で餅を搗くことは珍しいようです。

食品スーパーに行けば、商品として切り餅や鏡餅なども真空パックされて大きさも様々に売られています。
もう一家の主が額に汗をして杵を振り下ろす勇姿を眺めることはできなくなって、食材調達の運転係りになったようにみえます。

                   臼

正月飾りの注連縄や「鏡餅」も山ほど売られ、手に入るためにお父さんの「うんちく」の出番もない。ちょっと子どもが興味を抱き正月飾りや鏡餅についてネットで検索をすると凡そ下記のような体裁のいい答えが見つかる為、お父さん、おじいちゃんに訊く必要もなくなったようです。

【鏡餅】は、古代の鏡の形に似ていることから由来とされ、正月に神棚や床の間などに供える大きな丸餅。一般には、大小2つの平たい球状の餅と「橙」が使用されるが、地域により違いがあり、餅が三段のもの、二段の片方を紅く着色して縁起が良い紅白としたもの(石川県)、細長く伸ばしたものを渦巻状に丸めてトグロを巻いた白蛇に見立てたものなど様々である。

                鏡餅

鏡餅を下げる日は4日、7日、11日、20日など諸説ですが、その日を鏡開きとして下げた鏡餅を入れ雑煮や汁粉を作って食べ祝う。 餅(もち)の語源は、糯米(もちごめ)を蒸して、臼で粘り気が出るまでつき、丸や平らにした食べ物「餅飯(モチイヒ)」からとされる。

このようになると頑固なお父さんとしては、もう少し突っ込みの効いた異説も武装しておく必要がある。そこで、ここは敢えて民俗学的な視点から見てみます。

【鏡餅は、穀神である蛇を祀ったもの】

鏡餅の形状は蛇がトグロを巻いたようなものであり、丸く二枚重ねに橙を載せた三角形は、山の神の蛇を形取ったもので、垂仁天皇の時に大国主命が三輪山の神である大物主の娘の大田田根子命に「元旦に紅白の餅を荒魂たる大神に供えれば幸が来る」と教えたのが始まりだとの伝えもあるという。

                 歌垣

縄文の時代より「蛇」はその脱皮を繰り返し再生する力に畏怖を抱き蛇を祖先神として崇めていたことは数々の祭器に遺されている。また稲作を柱とするようになると稲を保管する「穂倉」の害敵である鼠を捕食する蛇は穀神として祀られるようになり、倉稲魂神(ウカノミタマノカミ)は稲の神であり、稲荷神社の祭神でもある。このようにウカ(宇賀)の神は蛇を神格としたものであることは民間信仰として定着しています。

次に鏡餅の由来が「鏡(カガミ)」であるとのもっともな説にたいして、カガミは蛇の古語であるカ、カカ、ウカによるもので、身は「ム」であることから、神=カム(ミ)であり、蛇身(カミ)のことだった(今でも蛇に山カガチという古名が残る)。
するとカガミ餅は【蛇身餅】であり、年穀の神を形取った「カガミ餅」は年神の魂であり「お年魂」なのである。

                 宇賀神

古来より山は蛇のトグロを巻いた姿として山の神の棲まうところという畏怖心がありました。現に水源の近い山には蛇が多くいて時に田圃に下りてきて蛙や鼠などを捕食する姿が見られ、手足もないのに水面を蛇行して渡る性状は崇められたものでしょう。

蛇の眼は瞼もなく光るものとして「カガヤク」という言葉にあるように火の燃え輝くものにも習合した。三輪山の神の目の光に天皇も身をすくめるという雄略記の記述もある。

すると鏡は蛇身を映して霊力をもち魔除けの呪物になりうると考えられる。古墳の副葬品として棺に外向きおかれるのは蛇の霊力のシンボルとしての鏡であった。

                白蛇
                
陰陽五行説が加わると白い鏡餅は白蛇として金気の象徴とされました。白も丸も金気であり春の木気を剋すものであるため、白く硬いモチ米を臼で搗き三角形の火のカタチにこしらえ春の障害となる金気剋殺に見立てたものとも考えられる(火剋金)。
                
モチの二枚の数は「火」であり三角形の形状とともに金気剋殺を助けるもので、同時に丑寅(冬から春)へのリレーを象徴する「橙」を上に載せることで春への転換を図っている。

「【橙】は、代々に渡り繁栄する」というのは一般の説ですが、橙が古くは、【回青橙】とよばれていた意味は、木に残った実は冬に熟して黄色くなっても再び夏になると青色を回復しアンチエージング(回春、長寿)の象徴であり、また黄色から青は冬の土用(土気)から青(春・寅)への丑寅の働きに見立てた呪物として計算された仕掛けかと思う。

そうすると鏡餅が飾られてヒビ割れが出来、やがて青かびがついてきたものを鏡開きに木槌で割って(刃を用いない)火に炙って頂くことは、そのものが金気剋殺の呪術となっていることに気付きます。

                もち2
 
白い鏡餅がヒビ割れ、青カビが出来ることも計算されていたのです。スーパーに真空パックで売られるとヒビも青カビもできないため、呪力の弱い鏡餅を飾ることになってしまうと心配すらします。

文明化とは便利であると同時に民俗の風化を伴なうものだということを、鏡餅から学ぶことができます。
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