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面浮立と御霊

ひゅーら、ひゅーらら
ひゅーら、ひゅーらら
カンカーン、カーン……

こがね色に稔った田圃を脇に見ながら、笛や鉦の囃子にのって、槍鉾や鳥毛という傘鉾を先頭にして、シャグマに蓬髪の鬼面の隊列が進んでくる。
              
                 浮立

黄色い襷(たすき)で体に抱えた太鼓を打ち合わせながら、バチをもつ手を振り、足を踏み下ろして勇壮にねり歩く。
「そーれ、そーれ」と、声が轟いく・・・

首をひねり、左右の手を廻しながら、歩を進める姿は、この世のものとは思えない、妖気を漂わせている。

白い蓬髪(ほうはつ)を振り乱し、その呪法である「反閇(へんばい)」ともいわれる独特の足踏みを行い、悪霊や災厄を鎮めながらねり歩き、地域の鎮守さまへと奉納に向かう。

これが「佐賀県重要無形民族文化財」に指定されている面浮立の行道芸能である。
                      
                 鬼面

勇壮な踊りは、どこかで記憶と重なる。相撲の土俵入りや、或は太極拳の武技に似た所作を繰り返すのは、災厄や疫病をもたらす悪霊と戦って、追い出す仕草。

面浮立は、五穀豊穣と悪霊の鎮送を祈願する農耕の神事だ。元は、「追儺(ついな)」と呼ばれる中国伝来の宮廷行事が風流化されたものだといわれる。

この独特の足踏みは、追儺にみられる「反閇」と同種のものであり、面浮立の伝わった地域的な密度からみると、長崎方面から東シナ海の追儺の民俗が伝わってきたものと考えられる。
                    
                  追儺

追儺は、「鬼やらい」ともいい、節分の行事に発展した仮面芸でもあり、反閇の足踏みである「ダダ」を踏んで除災と五穀豊穣を願うものだったという。

浮立は、風流の異字で「派手な衣装に身を包んで笛や太鼓の音に囃されて練り歩く「囃子物」や、これに合わせて拍子を取る「拍子物」、集団で踊る「風流踊」、などに分かれる。

囃子だけを奏するものを太鼓浮立、鉦浮立と呼び、伴奏して踊る浮流を「面浮立」と呼んだ。

ただ、全ての芸能は、神や霊に対する鎮魂、呪術に出発し、死霊や怨霊による凶作や疫病をさけるための呪文、仮面、呪具、足踏みがあり、呪具はやがて風流へと発展し、呪文は歌謡や念佛へ、足踏みは、舞踊や行道へと発展していった。
                      
                 風流傘

盆踊りも古代の鎮魂の儀礼であり、中世になって風流(ふりゅう)や踊り念佛とも云われ、寺院の法会に付随して伝わってきたようである。

祇園の御霊会(ごりょうえ)も、初めは厄を水に流すというものだったが、次第に御霊を送り流すのに鉦や太鼓を派手に打ち鳴らすカタチに変わった。

祭りの音量が派手で響き渡るものが多いのは、疫病や災害の排除のための怨霊鎮魂のためだ。

このような形態が「風流」と呼ばれるもので、笛・太鼓・鉦でにぎやかに囃し立て、装飾や仮装の衣装に身を包み、踊りながら練り歩くというものになっている。

こうした風流は、体に太鼓をつけた「太鼓踊り」の様相が強くなり、念仏踊りと相まって地域芸能に影響を与えたことになる。

                 浮立2
                    

日照りが続いたり、害虫が発生したりするのも、御霊の祟りだとして、その厄をはらおうと、鉦や太鼓を叩いて大勢で行進する。

怨霊を鎮めるため、それをかたどった人形や、怨霊に仮装した者を先頭に立て、一同行列し、鉦や太鼓をたたきながら村境や川べりなどへ踊り錬り歩いていく。

そうして、集団の激しい跳躍・踊りの中に怨霊を巻き込み、集落の外へと送り出す。こうした「鎮送の祭」の形式が盛んに見られるようになった。

力強く大地を踏み鳴らすと豊作になるとの伝承は、ここに由来している。

大きな鉦、太鼓の音が色づいた田園に駆け巡った。

動画:「面浮立
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