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竈神と「なまこ餅」

「荒神さんにも餅をあげんとね」
暮れも迫ると正月飾りを用意し、餅を搗(つ)いたり、竈(かまど)を掃除したという。
「竈」は食事の用意をする大切な「火」を使う場所のため、竈や炉の傍には「竈神(かまどがみ)」を祀っていた。竈神は「荒神さん」とも呼び、晦日(みそか)には必ず「竈祓い」を行いました。

宮中行事に影響を与えた道教の書「抱朴子」には、「竈神は、晦日(みそか)に天に帰り、人の素行の善悪、罪状を天帝に告げて再び地上に帰来す」とあるため、「庚申待」とも同様に民間にも広まったものでしょう。

                 竈
               
旧暦12月23日には「竈(かまど)祭(まつり)」を行い、日本の宮中では春と 秋の二回でしたが、一般には年末に行いました。「竈祭り」には、大掃除をして「荒神さん」に「なまこ餅」というものを奉納した。

なまこ餅は、鏡餅や切餅とは違って棒状の海鼠(なまこ)のカタチをした「餅」です。食べる時に、少しずつカマボコのように切り分けて焼いたり、油で揚げたりする。
現在でも餅屋さんで販売していて、豆などの入ったものなども注文を受けている。

                  なまこ餅

荒神さん(竈神)に「なまこ餅」を供えるのは、それが竈(かまど・くど)のカタチに似るからのようです。
不思議なのは、佐賀県の三日月町では荒神さんの「なまこ餅」の形が三日月形(への字)をしていたという。てっきり町名の三日月に因んだものと連想したらそんな資料が見当たらず、(U字形の)内側を広くすると福を招くと云われたそうですが、今ではあまり作らないという。

なまこ餅のU字の形の由来かと思われた「三日月」の郷名は「甕調(みかつき)郷」でしたので、三日月の意味はなく、この地域は「土生(はぶ)遺跡」など弥生時代の出土物も多く、土器(かわらけ)なども多いため本来は「甕調(みかつき)」のようでした。

小城市教育委員会 文化課によると
「なまこ餅は荒神さんにお備えするもので、佐賀では餅をくど(へっつい)に似せてU字形にします。3段重ねにして上にはあずきをのせる家もある。1月の荒神さんの日に、長男や戸主が食べましたが、結婚前のむすめさんには食べさせないそうです。
荒神さんは家の守り神で家族を大事にし、家に引き戻す力があるという。子どもたちが遊びにでるときは、くどのへぐら(煤)を額につけると家に戻れるという言い伝えがあった」
 
「へぐら」は、戸座(へざ)のことか、戸座なら朝廷や斎宮寮の「竈」に仕える職掌のことでした。 
    
                  三角なまこ
                
ただ全国で竈神と称して炉の傍の柱や壁に祀っている「神面」を見ると狂言などにカマド神としても登場するブアク(武悪)の面のようであり、火の神に奉仕する土色の精霊の像にそっくりである。

火の神は、調理、暖房、灯明にはたいへん重宝ですが、荒ぶる神として恐ろしい火事を出されては困る。そためには竈神にコントロールしてもらう必要があり、竈神の口は、三角ナマコのように「への字」に結んでまるで火勢に堪えているようだ。

                    ぶあく
                         
火をコントロールするのは水ではありません。
五行相剋では「水剋火」となり水は火を消してしまうため、制御をするのは「土」の役割です。囲炉裏の熾(おき)の火力を調整するのは昔から灰(土)でした。竈神は荒ぶる火を調伏制御できる土の神で「土公神」という地域もあります。

「竈」は土で作って後ろに煙(けむり)穴(あな)をあけたものですから、土気そのものです。すると荒神に供えるこの奇怪な「なまこ餅」の正体は、「かまど神」の容貌からのように思える。

「へ」は「戸」で竈神として所見する「古事記」上巻の「奥津比売命(おきつひめのみこと)」の奥は、燠(おき)で竈の中の火のことで、別名の「大戸比売神(おおべひめのかみ)」の「べ」かとも思う。つまり「戸」とは竈のことでした。

餅を3段に重ねるのは三宝荒神と習合した故か、それとも大年神・奥津日子命・奥津比売命の三神に供えるためでしょうか。

                    竈神1

荒神さんの餅は、最後の臼の餅、つまり飾り餅などを取った最後の残りの餅で作りクド(竈)形にするという。この餅は、「未婚の娘さんが食べると縁遠くなるとされ、嫁さんが食べると実家に帰る」などと伝えられた。

この云われは木火土金水の中の「土」の働きの説明のようだ。「土」は方位は「中央」「真ん中」で求心力が強く、嫁入り前の娘は居ついてしまい。お嫁さんは実家に戻る。煤をつけると迷わず帰る。戸主、長男は家を守り、次男以下は分家で出るから食べさせない・・・みな「土気」の説明なら合理的である。

旧暦12月(丑月)は、冬の「土用」を含んでいて寒い冬を送り、春を迎える季節転換の行事が多く、四季の交代の役割は陰陽五行の「土気」の役割でした。煤払い、松迎えも同様で、台所の主でもある竈(かまど)も同様のようだ。

土気は夏の土用と反対に、冷たい冬を送って万物生育の歳神(春)を呼ぶための働きをする。
年末に竈神を祀り、なまこ餅を奉納するのはそのためでしょう。三日月町の「U」字形のなまこ餅は、竈(荒神)を模したものとすると貴重な民俗だと思う。

今ではガスコンロやIHクッキング、レンジなどにより厨房から竈が消えてしまい観光用か芝居のセットでしか見なくなりました。
一方「厠(かわや)」が水洗トイレに変わっても、トイレの神様の歌までヒットしたのですが、日本の台所と家族を守った「竈神」は居場所がなく寂しくなったようです。

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