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夜の訪問者

家の中にも、いろんな生ものがいると思った。
イモリ、家クモ、蚊、やアブラムシなど……
机の前に、クモや虫が出ても、気にしなかった。蚊など、皮膚を刺すものは別にしても、あとは壁を這っていても、放っておいた。

しかし、今夜は違った……。

足の長いクモが、床を伝い、寝室の中に入ってきた。壁伝いに出てくるなら、見逃していたのだが、その日は、畳の上を夜具のほうへ進んで来る。

                      蜘蛛
部屋の外に追い出そうと、廊下へ誘導した。だが、その日は、思ったように、クモは逃げてはくれない。

ようやく部屋の外へ誘い出すと、何を思ったのか、フローリングの上に、じっとしているクモを、新聞を丸めて思わず叩いてしまった。
・・・・・・
クモは、潰れたのか―――、動かなくなった。

それを確認して、また動き出しそうに見えるクモを、恐る恐るティッシュに包んで、トドメの力を指先に加えてから、屑籠にポイっと棄てた。

──指先に、奇妙な感触が残り、急に後悔が襲った。
……親友の葬儀から帰った、夜だった。

進行の早い悪性の胃癌により、見舞いすらできないうちに、逝ってしまった。
まだ、若かったのに……。
                       会葬

お悔やみ欄には、喪主は奥さんではなかった。まだ半年ほど前に、母親を看取ったばかりだったので
奥さんも、きっと憔悴しきっていたにちがいない。

代わりに、ようやく社会人になったばかりの長男が、気丈に喪主を務めていた。
―――故人も、子どもの成長には、棺の中で、安堵したにちがいない。

ところが、数日が経って、故人の職場の同僚の話では、少し事情は違っていた。
彼は、早くから奥様や子供たちとは別居状態にあった。離婚はしていなかったが、老いた母親を見ながら長男として家を守り、別居中の家族には、仕送りを入れていた。

「誰にもいわんでくれろ」
と、同僚には、打ちあけていたという。
―――寂しかったのだろう。
むしろ、自由になっていたらサバサバしただろうか―――。

飲みに誘うと、いつも、ニコニコして付き合ってくれたが……
いま思うと、家庭のことをあまり話さなかった。

                    カラオケ

フィリピンパブにもよく通っていた。寂しさを紛らわせるように・・・店の娘ともカラオケを歌った。

彼の訃報を知り、「葬儀に行きたい」と、申し出た馴染みもいたという。
「もう終わったよ」、……同僚は、気転を利かせた。

あとのことを整える間もなく、突然、彼は他界した。
表情には出すことができない、悩みもあったろう―――。


                      yjimageOP5U7HCV.jpg

葬儀の帰りに、彼が、生前よく通っていたパブで、改めて、「偲ぶ会」をやろう……。
馴染みだった娘らと、グラスを囲んで、好んだ歌で追悼にしよう―――と、約束をした。

 気がつくと、また、夜の訪問者が一匹、白い漆喰(しっくい)の壁をつたって、近づいて来る……。
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