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山津波の刻印

広島市で発生した土砂災害は、七十人以上もの死者を出す大災害となり、最も被害の大きかった、安佐南区の八木地区では、現在も行方不明の方がいて捜索が続けられている。

大量の雨と土砂に抉(えぐ)られ、むき出しになった山肌をみると、住宅地に襲いかかる巨大な蛇のように見えた人も多いのではないでしょうか?

                土石流

実際、地元の人の言い伝えによると、この地域は水害が多く、元の地名は【八木蛇落悪谷(やぎじゃらくあしだに)】だったという。

「昔は、蛇が降りるような水害が多かった・・・」と。(実際に斜面崩落の現場からは、山津波の発生したであろう痕跡が地層から露出していた)

その後、宅地の開発が進み、「八木蛇落悪谷」では、売れないとしたのか「八木上楽地芦谷(やぎじょうらくじあしや)」と改名され、のちに現在の八木地区となったそうだ。

どこの地域でもこのような言霊信仰があるのか縁起の悪い名付けは変えられてしまう例は多くある。例えば窪地で水害が多い窪田という地名を久保田とするようなことが平気である。

地元住民は悪名を好んでつけるわけはなく、それには重大な警告を刻印するために地名に託したものであったに違いない。

                八岐

歳月が経ち、被災の記憶が風化すると、語呂のよい地名に消し換えて開発を進める。あとから山の神の領地に入居した人たちにはそのような警鐘は伝わらない。

                  山津波

山頂より幾筋もの亀裂と土石流に削られたうねりをみると、同じ中国山地を背景とする「ヤマタノオロチ伝説」を思い出す。

天上から追放されたスサノウが、アシナヅチ、テナヅチという老夫婦が、クシナダヒメを囲んで泣いている処に遭遇して、ヤマタノオロチの話を聞くところから始まるオロチ退治の話です。

テナヅチ、アシナヅチとは、そのまま「蛇」を暗示する名ですが、ヤマタノオロチは、書紀に「八岐大虵(ヤマタノオロチ)」とあり、「虵」は蛇のことですから、まさにオロチは「大蛇」となり、地元の伝承の「蛇が落ちるような水害」との伝承に符合します。
                     
また、吉野弘子氏によると、オロチは大蛇ということになっているが「カガチ」と違い、もともとオロチそのものには、蛇という意味はなく、むしろオロチの「オ」は「尾根」を意味し、「チ」は「霊」であり、山のもつ激しい霊威のことだった。

                 ヤマタノオロチ


ミヅチ(水霊)、ノヅチ(野霊)などのように、オロチは「嶺霊」「尾呂霊」としての山の精霊だったとする。つまり古代の人は、山をオロチ(嶺霊)とする信仰により、大蛇「オロチ」伝承となったという。そして、脈々とした連嶺を蛇と見立てるのは、山に龍が棲むといわれた風水の思想とも重なる。

「オロチの身体には、杉や檜が生い茂り、古苔に覆われている」との表記は、山そのものの描写となっていて被災地の尾根の様子と重なって来ます。

「腹をみると、血にただれて・・」とは、土石流により赤土の地肌がむき出しになった傷跡を形容するようにもみえる。

                尾根

出雲伝説のほうには「タタラ製鉄」の話が入ってはいますが、まさに八木とは八岐で、「八岐大虵(ヤマタノオロチ)」であり「八木蛇落悪谷」という古名のとおりだったのです。

古来より山津波の危険を地名に刻印して伝えようとした住民の思いを棄て、土砂災害危険地区の指定も後回しにした過ちは、土地の地歴を知らずに住着いた罪なき人々に被せられていると後悔せざるを得ません。

市町村合併により永年つたえられてきた地名を、うわべの聞こえのよいものに易えることは、もう少し慎重にする必要があったのではと思う。ここに被災された御魂のご冥福を祈ります。

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