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春に落ちる葉

 「そっちに散歩にいくんですか?」
 いきなり60代と思われる男に声をかけられた……。

 いつものように朝、犬をつれて森林公園の遊歩道を歩いていた。

「これから先に行くのは、やめた方がいいですよ。人が首を吊って樹に下がってますから・・」
「え、そうなんですか?」

「ええ、気持ち悪いから、見ないほうがいいですよ。今警察に連絡を入れたところです」

                  散歩

―――こういわれて……およそ緊急事態が呑みこめてきた。

この公園は、一級河川敷を利用した大きなスポーツ森林公園として整備されたものだった。
嘉瀬川の下流の周囲5キロほどの空地を、大小の樹木や、池、中央には大きな芝生広場をおき、周囲をトラック兼、遊歩道として回遊させている。

外周には、柵と県木でもある楠の木をはじめ、高木から灌木まで多種類の樹木を植えている。
特に、夏の陽射しの強いときには、その木々の木漏れ日の下を歩くと大変清々しく、自然公園として多くの市民の憩いの場所となる。

私も時折、朝の愛犬の散歩コースとして利用する。

                  森林公園

この公園は、旧佐賀藩の時代には、多くの罪人、或は政争に敗れた者の刑場として、またその梟首の場としてきた河原だった。氾濫しやすい河道を変更して、跡地の利用の方法として、広大な県立公園として整備した。

今では、野球場の北側の隅に、刑死した人々の供養のために「千人冢」という祠を建て、定期的に近くの寺の法師による読経が続いている。小さな祠には石地蔵尊が立ち、水や花など供物が途絶えたことはない。

                  千人冢

このような由来から、この鬱蒼とした樹木に囲まれた地は、ひとつの「神霊スポット」との噂も聞いている。
夜になると千人冢の近くにぼんやりと人の姿が立つのを見たとか、或は、公園として開設のあとも、よくこの森を自死の場所として選ぶ人がいるらしい・・・。

                  楠の木

夜になると、人通りも絶えて暗くなるために朝、訪れる人が眼に触れるまで発見されない。多くの樹木の中でも、とくに楠の大木は、枝の張り方が樹幹にたいして鈍角に伸びているため、至るところに吊り紐を架けやすい枝ぶりが多い。

 寒さが厳しい地域では、樹木は落葉によって冬を越すが、温暖な地域では葉を落とさず、越年するため常緑広葉樹林が多くみられる。
常緑広葉樹のユズリハや楠の木 は、春になると新しい葉が開葉した後で、古い葉が落葉するようです。このことが「家系が、親から子へと代わること」になぞらえ、「譲り葉」の名前が付いている。

                  鏡餅

ユズリハは、正月の鏡餅には、子孫繁栄のモノザネとして歳棚の上に飾られます。
楠の葉も、同じ様に春から初夏にかけて、若葉がついてから黄変して大量の葉を落しはじめる。

―――きっと、楠の木を墓標としたのに違いない。

私は、男のひとの忠告にしたがい、多少は怖いもの見たさの気持ちも抑えて踵を返した。
愛犬を車に乗せて帰ろうとすると、現場に向けてパトカーが警笛を鳴らしながら二台すれ違い、あとに救急車がつづいて来た。
                  球場

ただ、北に隣接する球場では、今この異変にも気づくことなく、躍動する命が白球を追いかけていた。ひとつの命が、落ちたことも知らずに・・・・・・。
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